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アコンカグア 山を降りる [登山]


下りは早い。 呼吸も楽なのでどんどん歩みが進む。 しかしつくづく広い尾根だ。 
霧にまかれたら方向が判らずに大変な事になるだろうが、今日のように晴れていれば問題ない。
キャンプアラスカ5000m付近。

戦い済んで日が暮れる。 キャンプカナダ下の4900m付近。

ドップリ暮れた夜9時にBC到着。 張りっぱなしのBCテントになだれ込む。
この日私とガイドのセルヒオは上昇1000m、下降2600mという凄まじい高低の行程であった。

翌日、第三次アタックを二日後に日程調整し居残ることになったK君とテント二張りなどの
共同装備品を残し、身の回りの荷物をまとめて馬で一足先に下山することにした。 
勤め人は時間がなく・・・ これ以上時間を掛けてはクビになる・・・


居残って3次アタックを狙うK君。 彼は私と高校から会社まで一緒だったのだが(実はそういうの
が10人以上居る・・・・高校からずっと一緒なのが、同じクラスだけで3人も・・・)このたび会社を辞め、民宿アコンカグアを高齢の増田さんご夫妻から買い取って継ぐ事になった違う道を歩むことになった。
(翌々日、K君も悪戦苦闘の末に登頂し、下山できたのであった! メデタシメデタシ! 
貴重な時間を使っての海外登山。 登頂率を高める為にもやはり低酸素訓練は事前にしてから
行く方が良いと思う。)


お馬さん、お世話になります。 馬子はガウチョ(アンデスカウボーイ)のアリード氏。

馬乗り、私は昔から下手だったのである・・・ 
今回も最初はしがみついているだけで余裕無く、完全に馬になめられていた。

しかし、人間は学習する。 行程4時間の間に色々と工夫を凝らし、何とか早足で継続して
進めるようになった。 足が浸かるほどの川も馬に乗ったまま余裕で渡れるようになったし、
少し余裕が出て平地部分では水筒の水を呑んだり、カメラを操作できるようになる。 
アリード氏も、調子が出てきて、「ファビオ(速いぞ)!」と云ってくれる。 
「あ、それってスバルのCMに出てきた言葉・・・」、と突然思い出す。


月の砂漠をひたすら下に降りる。 

アリード氏はアンデスなまりのスペイン語で唄を歌い続けている。
 
意味は判らないがきっと、

「月の砂漠もぉ、お馬で行けばぁ、あっという間にすり抜けるぅ。 
お馬よ、馬よ、よそ見したなら落ちて死ぬぞぉ、よそ見するなぁ、真っ直ぐあるけぇ。」

というような、オルコネス馬追い唄のような内容だったと思う。

実際、登山道から崖下に落ちて死んだという馬の屍骸(乾燥していて干物状)を時々目にする。
馬たちはそれを見て一体どういう気持ちなのだろうか。 暫し使役される馬の気持ちを考える。

登りは12時間掛かった行程を、下りはお馬で4時間で来た。 楽勝!

馬はオルコネスレンジャーステーション前で降りねばならない。 ここで迎えの車を待っていると、
何と言うタイミングのよさ! 10分ほどでマベーラさんが20歳そこそこの可愛い娘さん(といっても
一児の母だが)を連れてやってきた。 薬剤師の本業の仕事が忙しいときはこの仕事を娘に
させようということで、仕事を覚えさせる目的で実習に連れて来たらしい。 (外国人相手だから、
英語はもう少し勉強しようね。)

ムーラ屋で荷物を拾って、2時間半余りのドライブ。 
辺りが薄墨色に染まる夜9時に民宿アコンカグアに到着。 
今回の登山が終わりを告げた。

宿に帰るとヘリで運ばれたという、日本山岳会の理事・某大学山岳部監督の60歳代の男性が
おられた。 アコンカグアBCで体調を崩し、胃から出血し、ヘリとトラックで緊急下山させられて
来たのだという。 折角遠くまで来て可哀想に。 

でも、何にも関係ない民宿アコンカグアの増田さんご夫妻も、こうして突然発生した山の急患を
単に「日本人つながり」というだけでレンジャーから門前に届けられては困惑するしかない。
親切にお粥をたいて、床を取らせるのが精一杯。 
(この方、病状悪化し、次の日に増田さんの付き添いで市内の病院に入院された・・・スペイン語
できないので辛かったろうなぁ。 しかし、他に何人かいたというパーティーのメンバーはヘリに
乗り込んだ彼を見送り、そのまま登っていったらしい。冷たいなぁ・・・)

日本から持参の福島は二本松の銘酒、生酛大七を開け、完登を独りで祝い酒。

半分K君の無事な登頂を祈りつつ、半分は無事に帰ってこれた安心感に浸り、三合ほど呑みながら
次はどこに行こうかと考える。 山の中と違って空気は濃いのだが、相変わらず頭の廻りが遅く、
もどかしいながらも以下のような事に落ち着く。

1)海外登山も何回かこなし、これで図らずも七大陸最高峰の中、4峰に登った。 
・・・折角だから残りを登りたいような気もする。

2)でもあと3つはそう簡単ではない。

3)エベレスト登攀は時間的にも、金銭的にも技術的にも無理だろう。 しかし、なんとか
マッキンレー(北米)とビンソンマシフ(南極)には技術的に登れそうな気がする。

4)でも同じ登るなら、別に7大陸最高峰に拘らないでもいいような気もする。 どのみちFIXザイル
+ユマール使ってもエベレスト登山は自分で無理としている訳だし。
それより厳冬期の日本の表銀座縦走や無酸素のチョーオユー8201m登山なども魅力的。

4)まぁ、いずれにしても体力的に考え、登るなら早い方が良い。 
50歳になっての高峰無酸素登山は心肺機能的にきつい。

5)で、あればまずは興味のある未知の土地、アラスカのマッキンレー(6,194m) から登ろう。 
行くなら来年6月初めだ。

6)その為には有給休暇貯めねばならないので、今年は仕事休まず、妻を大切にして働こう。

「何と素晴らしい前向きな結論!」と自画自賛するうちに睡魔が襲ってきていつの間にか部屋の
ベッドで寝ていた。

注記) アコンカグア登山の参考情報としてアクセス・ご質問いただき、ありがとうございます。 事前の高度訓練は是非行われることをお勧めします。 貴重な時間とお金を使うのですから 登頂成功率はできるだけの事前準備をして上げる努力をすべきと考えます。 izumi
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フレンチ

土曜日はお疲れ様でした!izumiさん、blogお持ちだったのですね!
すいません。今まで知りませんでした。
アコンカグアすごいところですね。いやはや、私には無理そう。。。
お土産も一杯頂いて誠にすいませんでした!DSは楽しみですね(^^)
by フレンチ (2006-02-27 21:15) 

izumi

フレンチ様: どうも! DS21実物見てレストアやる気がでてきました!
また遊んでくださいませ。 今後ともなにとぞよろしくお願いいたします。
by izumi (2006-02-28 02:08) 

rommy

突然おじゃまします。
アコンカグアで検索していましたらこちらに辿り着きました。
今年の冬、密かに(休みが取れたら・・)アコンカグアを計画しています。
お聞きしたい事があり、こちらにコメントさせていただきます。
今は登る手段を考えているのですが、izzumiさんは個人と言う形で行かれたのですか?
日本からのツアーに参加すると非常に高くなってしまうので、現地でツアーかガイドを探し、登ろうかと思っているのですがそれは可能でしょうか?
教えていただければ大変参考になり、有り難いです。
by rommy (2006-09-09 20:32) 

izumi

こんにちは! うまく登れるといいですね!
私達は個人手配で登りました。 山自体は体力と高度順応さえうまくいけば我々40代の運動不足気味おじさんにも難しくは無いのですが、霧・悪天候時は登山道の尾根が広く、高山で脳が働いていない事もあり、まずルートを間違えて時間を食ってしまいます。その時間切れの計算感覚も、道が分からねばどうしようも無いのでガイド雇用での登山を強くお勧めいたします。
個人とツアーの差はよしあしです。ツアーは確かに高価です。しかし、手配の手間を省く事ができます。 でも・・・ツアーは他の人や引率ガイドがおり、「自分達の日程や体調」に合わせられず、多少の無理も利かず成功率が低くなると読みました。
私達二人は幸い海外での生活経験が長く、病院まで含めて英語ならば何とでもなるので、欧州アルプス、アフリカ、豪州も全て単独の自己手配で登っています。今回も手間を惜しまず、基本的には自分達で手配自体も楽しんでしました。 日程、飛行機、宿、ガイド、保険、食料手配、テント(二張)、その他装備(耐寒用具、通常装備+SPO2メーターなど)。 その結果、飛行機代が14万-18万円(二人で違う飛行機に乗ってメンドーサで落ち合ったための差)、ガイド1200ドル/2人、宿80ドル、現地自動車チャーター交通費400ドル/2、馬でのボッカ100ドル、ポーター200ドル/2人、食費・雑費200ドル、登山申請料300ドルほど、計一人当たり36万円ほどで登ってこられました。 但し、高度順応は別途日本で投資して4000m以上までの低酸素訓練を受ける事をお勧めします。 できれば5000mまでの低酸素チャンバーで自転車こぎをしてから出発されることを強くお勧めします。 日本出発から8日目に登頂でしたが、これはあらかじめ高度順応をしていたからこそできた事でした。
また、4000のベースキャンプまではいいのですが、ニドより上は寒いです。 外張りか内張りつきの軽量テントが無いと、睡眠不足状態で根性で登る事になりまして、高山病罹患率も高まり、成功が遠ざかります。 ベルリンキャンプの5400mも日中はいいのですが、夜間、出発時の早朝は零下10度以下になります。羽毛の厳寒期用シェラフ+ゴアカバー+サーモ系の下敷マットは絶対必要です。 ノーマルルートはピッケルは必要ありません。 ストックのみで大丈夫です。 

メンドーサの増田さんたちの民宿アコンカグアは経営者高齢に就き、店じまいしましたので、もし手配の相談をされるならば、メンドーサの登山用品販売・レンタルの最大手の店、ドイツ系アルゼンチン人の経営によるORVIZ.COMにご相談されてはいかがかと。英語のHPは
http://www.orviz.com/english/sale.htm
です。 ここでもガイド手配とメンドーサからの登山口までの自動車手配・馬でのBCまでのボッカ(+登頂後のお土産Tシャツまで)の手配が可能です。
また何か分からない事があれば、ご相談ください。
成功を祈ります・・・
by izumi (2006-09-10 01:27) 

rommy

アコンカグアについて細かくアドバイスを頂き、ありがとうございます。
今から行く気満々で楽しみになってきました。
英語の方は多少自信(?)はあるのですが、やはり一人、というのが不安要素です。あと寒さでしょうか。現地手配の方が半額以上安いですね。
いろいろな方のレポートを読み、個人でいかれた方の多くがメンドーサの民宿で手配をされていたようなので、私も。と考えていたのですが店閉まいとは!残念です。
izumiさんに教えていただいたHPを調べてみます。(でも英語なんですよね・・)
いろいろと装備も大変ですね。準備として低酸素室でのトレーニングのほかになにかされていましたか?
登山靴はどのようなもので登られましたか?私が今使っているのは皮の重登山靴なのですが、寒さに耐えられるかどうかわかりません。
またお聞きする事があるかと思いますが、その時はよろしくお願いします。
by rommy (2006-09-10 19:50) 

izumi

足回りのコンサーンは正しい着目点です!
登山靴は革の重登山靴、私も持っていて、欧州アルプス含めて20年間使いましたが、重さと、風の吹いたときの耐寒性、耐水性の不足を感じ、それは思い出として取っておき、今回思い切ってシンサレートの中に入った軽量耐寒複合素材登山靴(スカルパ)に換えました。 5万円ほどの投資でしたが結果として、それは大正解でした。 軽くて楽! 新素材恐るべし。 実際、アコンカグアでは登山者の9割以上がそうした新素材系の登山靴を使用していました。 低酸素による血流潤滑不足による体温低下もあり、足元は非常に冷えますので、そこに投資することは正しい選択です。 日本の冬山含めてあれほど足元の冷える登山は無かったので。

体力的に問題が無ければ、低酸素室トレーニングのみでOKだと思います。
私は覚悟とモチベーションを高める為に、職場の33階まで歩いて往復したり、家では冬のベランダでテント生活をしましたが、あれは遊びでしていました。
ではでは。
by izumi (2006-09-11 07:52) 

rommy

靴の件、ありがとうございます。
一昨年、キリマンジャロに登ったのですが、今の靴ではそのときすでに足先が冷え、痛く感じていたので心配でした。
痛い出費ですが仕方ありませんね。
それから紹介していただいた会社のHP,覗いてみました。日本からでもあらかじめ手配しておくことができるのか問い合わせてみようと思います。
ちなみにizumiさんもこの会社にお願いしたのですか?
外国ではガイドの質にばらつきがあり、ツアーでも当たり外れがあると聞きますが・・。
その他に、現地発着の国際公募隊のツアーがあったので、値段を調べてみたのですがそれでも高い(><) $4500(航空券除く)くらいでした。
by rommy (2006-09-12 21:29) 

izumi

靴への投資は、仕方ないと思います。 キリマンでは私は幸い寒くなく、重登山靴持っていかず、キャラバンで登りましたが、アコンカグアは日本の冬山とも冷たさのレベルが違う・・・・

公募登山隊だと航空券入れると65万円くらいになりますね。 まぁ、共同装備+引率人件費付きでは仕方ないかと思います。 でも、団体旅行は自分の体調に拘わらず団体行動によって束縛されるし、勤め人なので登山は早く終わらせねばいけなくて、私達はとても駄目だったのです。 (それでも、数年のうちにはチョーオユー公募登山隊に参加しようと思っていますが・・・)

さて、この会社は登山終了後に立ち寄ったところです。 しかし、話もしっかりしていましたし(貸し出しのレンタル装備は結構ボロだったが・・・)、手配もしている、とのことでした。 ここか、もしくは今年はBCに私の相棒が三次アタックの時にお願いしたモニカという女性ガイドもいて仕事待ちしたり、売り込みかけていたりしたので、メンドーサからBCまでの往復の足と馬の手配のみをここにお願いし、あとはBCでよりどりみどり(二桁!たくさんあります!)の業者テントを回って、感触のいいところを手配するのもありかと思います。 私達は増田さんにお世話になりました。 夏季最後にノーマルルート登って成功した登山客だったかも。 ガイドは確かにばらつきがありますが、いずれも無線装備+お茶のサービスくらいはしてくれますし、季節中は夜も必ずたくさんの人が周りのテント場で寝ていますので、霧に巻かれたりしない限りは周りに相談や情報交換をしながら進んでいくので、大丈夫だと思います。 ただ、早め(2ヶ月くらい前)に日程確定させて、「いいガイド頼む!」と予約しておいた方がいいと思います。
彼らも1-2月専門の季節労働者ですので、稼ぎ時は早めに労働の日程を確定させたいようです。

で、この業者にゆっくり英文メールで連絡を取りつつ、まずは靴+外張りつきゴアの軽量テントを購入されて靴慣らしも兼ねまして徐々に準備開始されてみてはいかがでしょうか。
それと、原宿の三浦さんのところに問い合わせしてご覧になられては? あそこの低酸素チャンバーでの高度訓化は絶対のお勧めです。 他とはチャンバーの気密性のレベルが違います。 あそこよりいいのは鹿屋体育大学や大阪大学くらいではないかしら?  
by izumi (2006-09-12 22:51) 

rommy

izumiさん、本当にありがとうございます。
的確なアドバイスのおかげでなんとか順調に進んでいます。
まずは教えていただいた会社ですが、問い合わせのメールを出したら、翌日には返事をもらい、素早くしっかりした対応に感心しました。
そこの会社では装備の貸し出しetcだそうで、ツアーやガイドはこちらに。ということで、
INKA Expedicion という会社のHPを紹介してもらいました。場所も近いそうです。メンドーサで最初にツアーなどを行った伝統ある会社だそうです。HPもガイド一人一人の名前&写真が載せられていたり、とてもしっかりしている印象を受けました。
ここでは17日間で約$2000でした。私の希望する日程が残りわずかと言う事で、とりあえずここにおさえで予約をし、パーティの人数や予備日があるのかどうかなど詳しく聞いていこうと思います。
個人で行くとなるとゴアテント購入(アライの一人用を持っていますが、ゴアでないときついですよね)食料関係・・負担が大きくなってしまうので、そういう行き方もあると視野に入れつつ、現地のツアーをさぐっていこうと思います。
低酸素室はできるだけ出発直前に慣らす為に行った方がいいですよね。何回くらい行かれましたか?
by rommy (2006-09-14 19:40) 

izumi

おぉ、それは良かった!
INKAは確かに現地では大手のエージョントで、テントも目立っていました。
しかもメンドーサ出発で2000ドル17日間は安い!

原宿の低酸素室は4000mから開始。 4000m二回、4500m一回、5000mを二時間行いましたが、あれをしていけば17日は掛からないかも・・・私らも10日以内で済みましたし、ボリビア高地4000m在住のJICAの人は天候にも恵まれ、4日で登山が終わっていました。 絶対のお勧めです、あれ。 時々三浦さんや息子さん、お嬢さんにも会えるし・・・
by izumi (2006-09-15 09:37) 

rommy

Izumiさん、お礼が遅くなりすみません。
準備の方は順調に進んでいます。というか、まだ出発まで3ヶ月もあったんですよね(^^;待ち遠しいです。
三浦さんの低酸素室、教えていただきありがとうございます。HPで調べてみました。ちょっと遠くて大変なのですが、出発前に通ってみます。
靴もいきつけの山屋さんで見せてもらいましたが、いろんなメーカーが出していて悩むところです。ちょうど女性の店員さんがアコンカグアに行かれたとのことで、いろいろ聞いてみようと思います。
また何かありましたらお聞きする事もあると思いますが、よろしくお願いします。
by rommy (2006-09-21 07:19) 

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