ウィーンフィルとフルトベングラーと [音楽とAudio]
年末。 ベートーベンとフルトベングラーを聞きたくなった。
私にとってはこの二つの名前は師走の季語。
今年は特に上記二つへのモチベーションは高い。
それは上司のSさんが貸して下さった文春新書「ウィーンフィル音と響きの秘密」(中野雄 著)
という本に触発されたからである。
「この本面白いよ」ということで、2日ほど玄関に寝かせてから読み始めたのだが、確かに面白く、
暇があれば少しずつ読み続けている。
フルトベングラーのベートーベン五番の指揮。
有名なタタタターンの三連八分音符のアインザッツ(出だし)は彼の手がぶるぶる震えながら
下からゆっくりと上に上っていき、13と1/3回ぶるぶる震えたあたりで始動に少し時間が掛かる
チェロとコントラバスの主席が気配を感じ取って「今だ!」と弓を動かすという。
楽団員の弾きたいという昂まりが最高潮に膨らんだところで一気にダムを解放するのを待つのが
マストロの指揮であった。 凄い。 充分練習を積んで、鋭利な刃物のように研ぎ澄まされた組織が
自主的に動き出す気持ちの昂揚を待つというのは理想に近い。自衛隊特殊部隊であったら怖いが。
また、この鋭利な刃物状態というのが中々常人の及ぶところではない。
まだ朝暗い6時50分に起き出し、NHKのその日を見、7時のニュースを見、7時30分の湯布院の朝
の連ドラを見、更に過去の連ドラアンコール再放送を見、ハイビジョンプレマップと、我が心の旅を
見ても中々会社に行こうという自主的な気持ちの昂揚のない私とはエライ違いだ。
(妻がいれば、「はい、遅れない!今日も稼ぐ!」とアインザッツの力点を明確に示してくれるが・・)
それはさておき、巨匠の戦後1950年録音版(ウィーンフィル)と1939年録音版(ベルリンフィル)
の差異! 流れるようなウィーンフィルの緩急に対してベルリンフィルの折り目正しい事!
余りに曲想が違う。 同じ曲を同じ指揮者が振ったのか? 好みはウィーンフィルの録音。
参考までにカルロスクライバー+ウィーンフィルの演奏と併せて聴いてみる。
いかにクライバーが自分のリズムで振っているかが解る。
そしてフルトベングラーがいかに巨匠であるかも。
フルトベングラーは哲学者だ。 深すぎる。
今度カラヤンも聞きなおしてみようっと。
今年当地に来たズビン・メータは、第五をいともあっさりと、まるで第四やモーツァルトの交響曲みたいに振った。開始部もいつ始まったのか分からないほど自然に入り、終楽章へもテンポ落とさず滑らかな進行。この曲が『運命』であることへの思い込みと期待が強すぎるのかも知れない、日本人は。
by 海南鶏飯 (2005-12-12 01:27)
メータさん、最近勉強しているのだろうか?
過去の感性と知識の遺産で振っているような気も・・・・
by izumi (2005-12-13 03:46)