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カイロ考古学博物館で涙する [旅は道連れ世は情け]

いったいいくつのお棺が展示されているんだろう。

カイロ考古学博物館には墓から掘り出した棺がひしめく。
考古学博物館? いやここは世界最大のお棺の博物館だ。

彩色豊かな出土品自体は確かに素晴らしいものだが、意匠凝らして
装飾を施され大切に埋葬された人、そして埋葬して送り出した人たちの
思いというものに考えを巡らすと、墓があばかれ、遺体や棺が展示され
ている彼らが可哀相で思わず涙が出た。




ここには有名なツタンカーメン王の墓からの出土品が展示されている。

その金彩色の副葬品、そして7重もに封印された柩と棺の豪華さには驚かされる。
DSC0580518.jpg


しかし、それらよりも玄室内部の副葬品の上にそっと置かれたという
矢車草の乾ききった破片を見ると、葬る側でその場に居て別れを告げた人の
想いがぐっと伝わって来る。


それだけ大切に最期の別れを告げた人のお墓なのに、後世の人間によって
あばかれ、装飾品も何もかもが剥ぎ取られ、今は遺体のミイラの身一つだけに
されて王家の谷に残されている彼と、それを見送ったであろう家族達が
あまりに可哀相で泣けてきた。


博物館の学芸員や発掘者たちは学術研究という名分の下でそれらに
「思いを致した」(by 鳩ぽっぽ)のだろうか。

DSC01904.JPG
泣き濡れた目で博物館の片隅にいた、日本の土偶と同じく殉葬の代わりに
埋められた2600年前の木偶と話し合った。

「1年前の墓をあばくのは犯罪なのに100年前、1000年前の墓はいいのか?」

木偶は静かに答えるのであった。
 
「日本でも所有権の不明になったお墓は無縁仏として合葬されるでしょう。 
それと同じですよ。 逆に昔の墓でも後継者が判明している皇室御陵や
例えば嶋津家や近衛家の墓は許可なく発掘できないでしょう?」 


・・・勉強になった。 

そういうものか、ならば妻の墓があばかれぬよう、自分はせいぜい長生き
しなくてはいけないなぁ、と思いつつエジプトをあとにして印度に戻った。

どうも一人暮らしが長くなると独り言が多くなっている様な気がするなぁ。




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